2025/05/04

Taiwan Today

外交

呉外交部長が「欧州価値サミット」で台湾への支持に感謝、権威主義に対抗の決意も

2023/06/15
呉釗燮外交部長がチェコのシンクタンクの招きに応じ、14日にプラハで開かれた「2023年欧州価値サミット」に出席。基調講演を行い、権威主義への対抗を呼びかけた。写真は講演中の呉外交部長(右)。(外交部)
呉釗燮外交部長(=外務大臣)がチェコ共和国のシンクタンク「European Values Center for Security Policy, EVC」の招きに応じ、14日にプラハで開かれた「2023年欧州価値サミット(European Values Summit 2023)」に出席。チェコのペトル・パヴェル大統領の開幕のあいさつのあと、「One Theater, One World, and One Vision」と題して基調講演を行った。
 
呉外交部長はまず、在任中、二度にわたってチェコに招かれたことは光栄だとしてチェコ側の厚遇に感謝すると共に、自由・民主・人権の価値を共有する外国の人々と集い、交流出来る機会を「大変大切に思っている」と述べた。
 
呉外交部長は欧州が現在戦争の衝撃の中にあることに触れ、ロシアのウクライナ侵攻は人権の価値や国連憲章における「紛争の平和解決」の基本原則、ならびにルールに基づく国際秩序に反するもので、ウクライナ及び欧州諸国に甚大な損失と悲しみをもたらしているとロシア側を非難した。呉外交部長はその上で、ロシア・ウクライナ戦争はインド太平洋地域にも大きな影響を与えていると指摘、台湾と理念の近い国々は「戦争の悪行」を阻止する信念を堅持し、共に対ロシア制裁とウクライナへの支援を行っているが、それは台湾が地球の裏側でもうひとつのさらに強大な権威主義の拡張勢力に向き合っているからだと説明した。
 
呉外交部長は、アジアでは中国の権威主義によるグレーゾーン作戦の脅威や経済的脅迫が日々増していると強調。中国は認知戦やニセ情報、サイバー攻撃など複合的な手段で絶えず台湾の開放的な社会を攻撃しているほか、軍機や軍艦に台湾海峡の中間ラインを度々越えさせるなど、侵入と脅しを以って台湾人民が自らを守ろうとする意志の動揺を画策していると批判した。
 
呉外交部長は、香港での経験は「一国二制度」が実現不可能であることを説明しており、中国が2019年1月2日に発表した「一国二制度の台湾方案」の提示に対して、台湾はいっそう揺らぐことなく自由と民主を選択するようになったと強調。一方で、「台湾は中国を『魔物』とみなそうとしているのではない。台湾は中国と文化の根源を共有しており、中国の人々に対して敵意は無い。台湾人民の享受する自由が中国でも実現すればと望んでいるのだ」と述べた。
 
続けて呉外交部長は、中国の拡張主義は台湾にとどまらず、東シナ海及び南シナ海へと広がっており、「海上民兵」や武装した漁船などが人民解放軍の命令を執行し、権力と領土を拡張していることが地域の平和維持をいっそう難しくしているのだと主張した。
 
呉外交部長は、欧州での戦闘とアジアにおける権威主義の拡張は一見関係ないようだが、実際には互いにつながっており、世界的な影響を生み出すと指摘、「例えばロシア・ウクライナ戦争が勃発してから世界各地で景気後退やインフレ、エネルギー不足や株価暴落などが起きた。台湾海峡が有事となったならば世界の半分を占める海運や90%以上の先端半導体の供給が深刻な打撃を受ける。世界経済へのダメージは想像することも出来ない」と述べて警戒を呼び掛けた。
 
呉外交部長はまた、「全世界の民主主義国は徐々に潜在的脅威を意識し、権威主義拡張に連携して対抗し始めている」としてこれを歓迎、その例として日本と欧州連合(EU)との連携、チェコをはじめとするEU加盟国が相次いでインド太平洋戦略を発表し、インド太平洋地域の情勢に関する理解と関心を高めていることを挙げた。
 
呉外交部長は、台湾は台湾海峡の現状を全力で維持すると強調、「我々が圧力に屈服することはないし、挑発する側になることもない。台湾海峡の平和と安定の維持は両岸双方の責任であるはずで、それは世界の民主社会が共に望むことでもある」と語った。
 
このほか呉外交部長は欧州からの支持に感謝。特にチェコのミロシュ・ビストルチル上院議長、アダモバ下院議長が脅しに屈せずそれぞれ代表団と共に台湾を訪れたこと、またパヴェル大統領が今年1月の大統領選で当選するとすぐさま蔡英文総統と電話会談したことなどはいずれもビジョンと勇気の表れであり、故ハヴェル元大統領の理想と志を受け継ぎ、台湾とのパートナーシップを深める決意を示すものだと評価した。
 
呉外交部長は最後に、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、権威主義の拡大により世界の秩序は変化したと指摘。それによって民主・自由・法の支配・人権の価値が脅威にさらされる中、台湾は断固として民主主義陣営と共通の価値を守り抜き、故ハヴェル元大統領が堅持した価値と信仰を守っていくと強調し、「東西の民主主義国が連携することで全ての挑戦は克服出来る。そして民主主義が最終的に勝利することを深く信じている」と語った。
 
チェコのシンクタンク「European Values Center for Security Policy, EVC」は2016年から毎年「欧州価値サミット」を開催して世界が関心を持つ議題について議論しており、民主主義コミュニティの団結と連携のコンセンサスを目指してきた。呉外交部長が招かれて講演するのは三度目で、このことは欧州諸国の、台湾における民主主義の発展に対する高い評価、ならびに台湾海峡の平和と安定に対する関心のほどを表している。
 
 

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